ピアノで奏でる雨の響き <8>
本日、横浜は今月に入って初めて傘要らずのお天気。梅雨もあと10日ほどで明けてくれるでしょうか…。
■ 久石譲:La Pioggia
タイトルに「雨」が入ったピアノ曲をご紹介してきましたが、とりあえず今回で一区切りしたいと思います。そして最後に選んだのは、宮崎駿監督や北野武監督の映画で音楽を担当し多くの名曲を生んだ作曲家、 久石譲の「La Pioggia」(イタリア語で「雨」の意味)です。
この曲も、オリジナルはピアノ独奏ではありませんが、久石譲の曲の多くがそうであるようにオーケストラの響きの中でピアノが大切なパートを担っていて、ピアノ独奏用に編曲された楽譜も多く出版されています。
「La Pioggia」は1998年に公開された映画、中里恒子原作の「時雨の記」のために書かれた曲。「時雨の記」は、若い頃に一目惚れした女性と20数年ぶりに偶然に再会した男性の、大人の純愛を描いた物語です。
映画では、この男性を渡哲也が、そして、鎌倉で生け花を教えながら慎ましく生活しているという設定の女性を吉永小百合が演じています。あまりに美しすぎて、現実離れしたカップルではないですか?!
この二人の切ない恋愛と久石譲の音楽が美しく絡み、映像としては申し分ないのですが、原作を先に読んでいた私には、自分がイメージしていた主人公とあまりに掛け離れ過ぎてしまい、久石譲の音楽をBGMに本を楽しんでいるほうが良かったような…。
冒頭と中間部に少しだけ雨の雫を連想させるパッセージがある以外は、雨を描写したような音使いはなく、主人公の心情に寄り添うようなしっとりとあたたかな、非常に美しい曲です。
久石譲本人のライブ演奏でお聞きください。