Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

アンヌ・ケフェレックを聴く

フランスのピアニスト、アンヌ・ケフェレックのリサイタルに行ってきました。2020年に予定されていたものが、コロナで延期になりようやく開催されたものです。

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コロナ時代に突入して以来、私にとっては実に2年以上ぶりのホールで聴くプロの生演奏でした。

プログラム前半は、ショパンドビュッシーラヴェル・リストの作品。

ショパンの”夜想曲 第20番 遺作”から始まり、”幻想即興曲”、”子守歌”、そしてドビュッシー”水の反映”、ラヴェル”海原の小舟”、リスト”悲しみのゴンドラ”、”波の上を歩くパオラの聖フランチェスコ”と、水を彷彿とさせる曲が続きました。

このように続けて聴いてみることで、それぞれの作曲家が表現する「水」の響きの違いや特徴が際立ち興味深かったです。

 

後半は、「フランスの庭園を一緒に散歩するような、さまざまなフランス音楽を詰め込んだプログラム」ということで、サティ、プーランク、セヴラック、アーン、ラヴェルドビュッシー、ケクラン、シュミットの小品が演奏され、洗練された美しい響きを楽しみました。

御年74歳のアンヌ・ケフェレック。ステージに現れた姿はとても華奢で、ちょっと心配になるぐらい弱弱しく見えましたが、休憩まで舞台袖に戻ることなく次々と一気に難曲を弾ききる集中力、そして年齢をまったく感じさせないダイナミックかつ華麗な演奏にすっかり魅了されました。

コロナ禍の厳しい入国規制のなか、来日してくれたケフェレックに鳴りやまぬ拍手。

「平和を祈って、そしてウクライナの勝利を祈って。」というような内容の短いスピーチのあとで演奏されたアンコールは、ヘンデル作曲(ケンプ編曲)のメヌエットでした。

ホールに響く静かなピアノの音色に包まれながら、祈り、鎮魂、悲しみ、怒り、希望、恐怖、哀願……さまざまな感情がわきあがってきて、ウクライナの人々が一日も早く今の状況から解放され、平和な日々が取り戻せるよう祈らずにはいられませんでした。

 

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