Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

剥がれる鍵盤!ヤマハのプライドはどこへ?

ヤマハの鍵盤が剥がれる!

先日、教室の生徒さんからショッキングな写真を見せられました。

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去年買ったばかりのヤマハの中古ピアノ(2013年製)の鍵盤が、どんどん剥がれていくというのです!

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ピアノを購入した楽器店に連絡すると、ある期間に製造されたヤマハのピアノに多発している問題で、原因は鍵盤に使われた接着剤であるということ。この問題がわかったのはもう数年前のことで、ヤマハも把握していて、剥がれた場合は申し出があれば無償で交換するということでした。

「無償で交換する」と聞くとホッとして終わってしまう話しのようでもありますが、果たしてそれでいいのでしょうか?

販売時に剥がれる可能性を知らせない理由とは?

まず、なぜ楽器店はピアノを販売したときに、鍵盤が剥がれる可能性があることをおしえてくれなかったのでしょうか?このピアノを購入した生徒さんが楽器店に抗議しました。

販売員の返事は、100%剥がれるわけではないので、ヤマハの方針として伝える必要はないというものなので言わなかったと。末端の特約店はトップのヤマハの意向に沿った営業をするしかないのだということでした。

同じ製造年のピアノでも、鍵盤が剥がれるものと剥がれないものがある。剥がれないかもしれないのだから、黙って売ってしまえという話しです。不良品である可能性があるのに、それを隠して売っているのです。

ヤマハへの信頼が揺らぐ

営業のときにネガな要素は極力おもてにしたくないのは理解できます。でも、万が一剥がれた時には無償交換をするということを知らせれば、必ずしも営業に不利になるとは限りません。

今回のケースのように、何も知らされずに購入し、突然どんどん鍵盤が剥がれだし、実はこの問題は以前からわかっていたと知らされたらどうでしょうか?ヤマハへの信頼感や企業イメージは一気に損なわれます。

ちなみに、ヤマハのホームページには製品の品質不具合を公表している「重要なお知らせ」というページがありますが、鍵盤が剥がれる問題については公表していません。

重要なお知らせ | ヤマハ株式会社

ヤマハは無償交換することを周知させるべき!

実はこの問題は楽器店はもちろん、調律師さんの間では周知されていることだそうです。でも、今まで私は聞いたことがありませんでしたし、そんなことが起こるとは想像したこともありませんでした。

なので、もし自分のピアノの鍵盤が買って数年経ってから剥がれ始めたら、きっと部屋が乾燥しすぎていたなど、自分の管理が悪くてピアノにダメージを与えた結果で剥がれたのだと思ってしまうでしょう。

そして、運悪くタチのよくない調律師や楽器店に修理を依頼してしまったら、修理代を請求され払ってしまう可能性だってあります。

車の部品に不具合の可能性があれば、たとえそれが数%の確率でも命に関わるのでリコール対象になるけれど、ピアノの鍵盤が剥がれても命を落とすことはないのでリコールどころか、その問題を公表しなくてもいいだろうというのは、ヤマハを信頼して楽器を購入した音楽愛好家を甚だしく裏切る行為ではないでしょうか?

ヤマハは、鍵盤が剥がれる可能性のある製造年のピアノと、剥がれた場合には無償交換することの周知に努めるべきです!

ヤマハの企業姿勢が問われる

ヤマハといえば日本が誇る一流楽器ブランド(だったハズ)。つい最近もショパンコンクールの舞台でSteinwayやFazioliと並び存在感を発揮していました。世界の舞台で輝かしい功績をあげるのも大切なことでしょうが、たとえ初心者であれ一般の音楽愛好家にも信頼して選ばれ、奏でる喜びをもたらすことが楽器メーカーの誇りだと思うのですが、ヤマハの楽器メーカーとしてのプライドはどこにあるのでしょうか?

決して安い買い物ではない、大切にしていた自分のピアノの鍵盤がどんどん剥がれていくなんて、どれだけ衝撃的なことだかわからないのでしょうか?

問題が生じてしまったのなら、徹底的にフォローする姿勢を示すことでしかブランドへの信頼感は回復できないと思うのですが。

ヤマハの中古ピアノ購入を検討されている方へ

これからヤマハの中古ピアノを買おうと検討されているかたは、そのピアノが鍵盤が剥がれる問題が生じている製造年代に該当しているか必ず確認してください。そして該当している場合は、たとえその時点で剥がれていなくても、鍵盤を交換してもらってから購入することをおすすめします

鍵盤は剥がれ始めると、次々と剥がれていくようです。鍵盤が剥がれてしまうと、交換の手配から実際に交換が終わるまでの期間、いつものような練習はできません。

私の生徒さんの場合は、教室のコンサート直前だったので一番練習したいときに思うように練習ができませんでした。

車の欠陥と違って命に関わるような重要な問題ではないといえ、大切なコンサートや入学試験、オーディションなどの前に鍵盤が剥がれ始め弾けなくなってしまったら、その人にとっては一大事にだってなり得るのです。

ピアノは安い買い物ではありません!後悔のないようしっかりと品質を確かめたうえで、納得いく買い物をするようにしてください。

~後日談~

楽器店にクレームを入れてから約3週間経ち、生徒さんのピアノはようやく鍵盤が交換されました。

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すべての鍵盤を取り外して一本ずつ取り付けていく作業で約4時間かかったとのこと。

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これだけの大掛かりの作業をしたら、当然調律が必要だと思いますが、調律師さんは「交換しただけでは音は狂わない。無償の鍵盤交換に調律は含まれない。」という理由でそのまま帰ろうとしたということ。

びっくりした生徒さんは「それはおかしいだろう。」と交渉して、結局簡単に調整はしてもらったそうですが、う~~ん、やはりヤマハは素人の音楽愛好家をバカにしているとしか思えません!鍵盤が剥がれて多大な迷惑をかけたのだから、慰謝料代わりに「鍵盤交換&調律」のセットサービスぐらい当然だと思いますが?

プロのピアニストのコンサートでは、休憩時にも調整が入るぐらい響きは微妙なものです。いくら素人相手でも、これだけピアノをいじって調律は必要ない、音は狂わないと言われて納得できるでしょうか。

ヤマハさん、もう少し音楽に誠実に、そしてヤマハを信頼して楽器を購入したお客さんを大切にしましょうよ。