Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

言ったことありませんか?「家では弾けていたのに……」

レッスンでの嘆き

しっかり練習してレッスンに行ったのに、先生の前で弾くとミスを連発してしまい、思わず言ってしまったこと、ありませんか?

「家ではもう少し弾けていたんですけれど……。」

先生の前で、家で弾くのとまったく同じように弾くのは無理としても、まるで練習してこなかったかのようにボロボロになってしまうと、情けなくなって思わず口から出てしまいますよね。

私も学生のときに何度も言った経験があります。そして、言った直後に「言い訳がましいな。先生、そんなことを言っても信じてくれないだろうな。」と自己嫌悪におちいったものです。一生懸命練習して行ったときほど、このガッカリ感は痛く心に刺さるものです。

そんな私の嘆きに、こう返した先生がいました。

「練習してきてここで弾けなくなったのと、練習してこないで弾けない違いはわかるから、わざわざ言う必要はない。」

そのときは、「そんな違いがわかるはずないのに、先生は優しいな。」ぐらいにしか思っていませんでしたが、教わる立場から教える立場になり、それは慰めではなく、違いは本当にわかるものだと知りました。

ということで、練習して行ったのに弾けなくなってしまったとき、あえて「家では弾けていたのですが」と言わずとも、先生にはわかるのでとりあえず安心してください!

それにしても、練習したのに先生の前では弾けなくなるのは悔しいですよね。

いったいなぜ弾けなくなってしまうのでしょうか?

先生の前で弾けなくなるワケ

自分で自分を緊張させてしまう

練習して前回のレッスンよりも上手に弾けるようになっていると、当然その成果を先生に聞いてもらいたい、認めてもらいたいという期待が高まり、自分で自分を緊張させてしまうのです。それは、発表会であがってしまうのと同じ状態です。

緊張すると、家で弾いている時よりも体に力が入り、指の動きがかたくなります。これだけでもう、練習していた時のようにスムーズには弾けなくなってしまいます。

そのうえ「間違えたくない!」という気持ちが強まるので、家では特に注意を払わず聞き流して弾いていたような音をしっかり聞くようになり「あれ?こんな音を弾いていたかな?」「この音で正しいのかな?」と不安になっていき、そんな自分に動揺して更に弾けなくなりドロ沼化してしまうのです。

レッスンのときに、家で練習してきた成果を十分に先生に聞いてもらうためには、発表会のときと同じような緊張対策が必要です。

レッスンでガッカリしないために試すべきこと

【1】レッスンへ行く前に、スマホが先生の耳だと思って録音してみる

録音していると思うだけで家でも緊張するので、先生がすぐ横で聞いている時に近い状況をつくりだすことができます。

更に、練習して指が弾き慣れた後ではなく、その日に弾く最初の演奏を録音するというようにハードルを上げると、より緊張感が増し効果的です。

録音していない時と録音している時の演奏に差が出るうちは、上手に緊張をコントロールして弾けないということなので、レッスンでも上手に弾けない確率が高くなってしまいます。録音していても同じように弾けるようになるまで繰り返してみましょう。

【2】家で練習しているときの自分の体のゆるみ具合を覚える

緊張緩和に欠かせないのが「脱力」。レッスンで弾き始める前に、肩や腕が力んでいないか確認して、深呼吸して体をゆるめてみてください。家で練習している時の自分の体のゆるみ具合を覚えて、レッスンで弾き始める前に、その感覚に近づけるように体の準備をします。

以上のふたつを試しみるだけで、レッスン時のガッカリはだいぶ減らせるはずです。

ふだんの練習で心がけるべきこと

レッスンしていると、生徒さんから「あまり深く考えずに、なんとなく練習していました。」と言われることがよくあります。

ふだんの練習でも自分の弾いている音を注意深くしっかり聞くことが大切です。

レッスンで注意されたことができているか楽譜に書かれている指示が自分の演奏に反映されているかなど、しっかり集中して聞きながら練習してみてください。

レッスンを受けている時と同じ耳の集中力をもって、ふだんの練習ができたら理想的です。

疲れている時は無理をしない

ただし、疲れていて集中力がもたないときは、指の運動を目的としたシンプルな練習でもOKです。

その日の体調やスケジュールに合わせて、臨機応変に練習内容や時間を調整するのが無理なく楽しくピアノを長く続けるコツです。

アンヌ・ケフェレックを聴く

フランスのピアニスト、アンヌ・ケフェレックのリサイタルに行ってきました。2020年に予定されていたものが、コロナで延期になりようやく開催されたものです。

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コロナ時代に突入して以来、私にとっては実に2年以上ぶりのホールで聴くプロの生演奏でした。

プログラム前半は、ショパンドビュッシーラヴェル・リストの作品。

ショパンの”夜想曲 第20番 遺作”から始まり、”幻想即興曲”、”子守歌”、そしてドビュッシー”水の反映”、ラヴェル”海原の小舟”、リスト”悲しみのゴンドラ”、”波の上を歩くパオラの聖フランチェスコ”と、水を彷彿とさせる曲が続きました。

このように続けて聴いてみることで、それぞれの作曲家が表現する「水」の響きの違いや特徴が際立ち興味深かったです。

 

後半は、「フランスの庭園を一緒に散歩するような、さまざまなフランス音楽を詰め込んだプログラム」ということで、サティ、プーランク、セヴラック、アーン、ラヴェルドビュッシー、ケクラン、シュミットの小品が演奏され、洗練された美しい響きを楽しみました。

御年74歳のアンヌ・ケフェレック。ステージに現れた姿はとても華奢で、ちょっと心配になるぐらい弱弱しく見えましたが、休憩まで舞台袖に戻ることなく次々と一気に難曲を弾ききる集中力、そして年齢をまったく感じさせないダイナミックかつ華麗な演奏にすっかり魅了されました。

コロナ禍の厳しい入国規制のなか、来日してくれたケフェレックに鳴りやまぬ拍手。

「平和を祈って、そしてウクライナの勝利を祈って。」というような内容の短いスピーチのあとで演奏されたアンコールは、ヘンデル作曲(ケンプ編曲)のメヌエットでした。

ホールに響く静かなピアノの音色に包まれながら、祈り、鎮魂、悲しみ、怒り、希望、恐怖、哀願……さまざまな感情がわきあがってきて、ウクライナの人々が一日も早く今の状況から解放され、平和な日々が取り戻せるよう祈らずにはいられませんでした。

 

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剥がれる鍵盤!ヤマハのプライドはどこへ?

ヤマハの鍵盤が剥がれる!

先日、教室の生徒さんからショッキングな写真を見せられました。

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去年買ったばかりのヤマハの中古ピアノ(2013年製)の鍵盤が、どんどん剥がれていくというのです!

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ピアノを購入した楽器店に連絡すると、ある期間に製造されたヤマハのピアノに多発している問題で、原因は鍵盤に使われた接着剤であるということ。この問題がわかったのはもう数年前のことで、ヤマハも把握していて、剥がれた場合は申し出があれば無償で交換するということでした。

「無償で交換する」と聞くとホッとして終わってしまう話しのようでもありますが、果たしてそれでいいのでしょうか?

販売時に剥がれる可能性を知らせない理由とは?

まず、なぜ楽器店はピアノを販売したときに、鍵盤が剥がれる可能性があることをおしえてくれなかったのでしょうか?このピアノを購入した生徒さんが楽器店に抗議しました。

販売員の返事は、100%剥がれるわけではないので、ヤマハの方針として伝える必要はないというものなので言わなかったと。末端の特約店はトップのヤマハの意向に沿った営業をするしかないのだということでした。

同じ製造年のピアノでも、鍵盤が剥がれるものと剥がれないものがある。剥がれないかもしれないのだから、黙って売ってしまえという話しです。不良品である可能性があるのに、それを隠して売っているのです。

ヤマハへの信頼が揺らぐ

営業のときにネガな要素は極力おもてにしたくないのは理解できます。でも、万が一剥がれた時には無償交換をするということを知らせれば、必ずしも営業に不利になるとは限りません。

今回のケースのように、何も知らされずに購入し、突然どんどん鍵盤が剥がれだし、実はこの問題は以前からわかっていたと知らされたらどうでしょうか?ヤマハへの信頼感や企業イメージは一気に損なわれます。

ちなみに、ヤマハのホームページには製品の品質不具合を公表している「重要なお知らせ」というページがありますが、鍵盤が剥がれる問題については公表していません。

重要なお知らせ | ヤマハ株式会社

ヤマハは無償交換することを周知させるべき!

実はこの問題は楽器店はもちろん、調律師さんの間では周知されていることだそうです。でも、今まで私は聞いたことがありませんでしたし、そんなことが起こるとは想像したこともありませんでした。

なので、もし自分のピアノの鍵盤が買って数年経ってから剥がれ始めたら、きっと部屋が乾燥しすぎていたなど、自分の管理が悪くてピアノにダメージを与えた結果で剥がれたのだと思ってしまうでしょう。

そして、運悪くタチのよくない調律師や楽器店に修理を依頼してしまったら、修理代を請求され払ってしまう可能性だってあります。

車の部品に不具合の可能性があれば、たとえそれが数%の確率でも命に関わるのでリコール対象になるけれど、ピアノの鍵盤が剥がれても命を落とすことはないのでリコールどころか、その問題を公表しなくてもいいだろうというのは、ヤマハを信頼して楽器を購入した音楽愛好家を甚だしく裏切る行為ではないでしょうか?

ヤマハは、鍵盤が剥がれる可能性のある製造年のピアノと、剥がれた場合には無償交換することの周知に努めるべきです!

ヤマハの企業姿勢が問われる

ヤマハといえば日本が誇る一流楽器ブランド(だったハズ)。つい最近もショパンコンクールの舞台でSteinwayやFazioliと並び存在感を発揮していました。世界の舞台で輝かしい功績をあげるのも大切なことでしょうが、たとえ初心者であれ一般の音楽愛好家にも信頼して選ばれ、奏でる喜びをもたらすことが楽器メーカーの誇りだと思うのですが、ヤマハの楽器メーカーとしてのプライドはどこにあるのでしょうか?

決して安い買い物ではない、大切にしていた自分のピアノの鍵盤がどんどん剥がれていくなんて、どれだけ衝撃的なことだかわからないのでしょうか?

問題が生じてしまったのなら、徹底的にフォローする姿勢を示すことでしかブランドへの信頼感は回復できないと思うのですが。

ヤマハの中古ピアノ購入を検討されている方へ

これからヤマハの中古ピアノを買おうと検討されているかたは、そのピアノが鍵盤が剥がれる問題が生じている製造年代に該当しているか必ず確認してください。そして該当している場合は、たとえその時点で剥がれていなくても、鍵盤を交換してもらってから購入することをおすすめします

鍵盤は剥がれ始めると、次々と剥がれていくようです。鍵盤が剥がれてしまうと、交換の手配から実際に交換が終わるまでの期間、いつものような練習はできません。

私の生徒さんの場合は、教室のコンサート直前だったので一番練習したいときに思うように練習ができませんでした。

車の欠陥と違って命に関わるような重要な問題ではないといえ、大切なコンサートや入学試験、オーディションなどの前に鍵盤が剥がれ始め弾けなくなってしまったら、その人にとっては一大事にだってなり得るのです。

ピアノは安い買い物ではありません!後悔のないようしっかりと品質を確かめたうえで、納得いく買い物をするようにしてください。

~後日談~

楽器店にクレームを入れてから約3週間経ち、生徒さんのピアノはようやく鍵盤が交換されました。

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すべての鍵盤を取り外して一本ずつ取り付けていく作業で約4時間かかったとのこと。

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これだけの大掛かりの作業をしたら、当然調律が必要だと思いますが、調律師さんは「交換しただけでは音は狂わない。無償の鍵盤交換に調律は含まれない。」という理由でそのまま帰ろうとしたということ。

びっくりした生徒さんは「それはおかしいだろう。」と交渉して、結局簡単に調整はしてもらったそうですが、う~~ん、やはりヤマハは素人の音楽愛好家をバカにしているとしか思えません!鍵盤が剥がれて多大な迷惑をかけたのだから、慰謝料代わりに「鍵盤交換&調律」のセットサービスぐらい当然だと思いますが?

プロのピアニストのコンサートでは、休憩時にも調整が入るぐらい響きは微妙なものです。いくら素人相手でも、これだけピアノをいじって調律は必要ない、音は狂わないと言われて納得できるでしょうか。

ヤマハさん、もう少し音楽に誠実に、そしてヤマハを信頼して楽器を購入したお客さんを大切にしましょうよ。

 

ピアノで奏でる「絆」

今日は「KIZUNA PIANO」というプロジェクトをご紹介します。

KIZUNA PIANO プロジェクトとは

異なる文化や価値観、極端な愛国心による「分断」の風が吹くなか、突然世界を襲ったコロナの猛威。このような時だからこそ、言葉や人種の壁を越え、音楽を起点とした「絆のリレー」をスタートさせたいという思いから、作曲家 岩代太郎さんが立ち上げたプロジェクトです。

10名の作曲家がリレー形式で作曲

岩代太郎さん他、坂本龍一小曽根真、萩野清子、榊原大塩谷哲渋谷慶一郎、狭間美帆、藤倉大村松崇継 (敬称略) の9名の作曲家が「KIZUNA PIANO」というタイトルのピアノ曲をリレー形式で作曲しました。

楽譜の収益金の一部はNGO国境なき医師団」に寄付されます。

www.kizunapiano.com

 「KIZUNA PIANO」を弾いてみて

プロジェクトのサイトで、ピアニスト三舩優子さんによる模範演奏を聞くことができますが、実際に私も弾いてみました。

譜面は、最初の3ページぐらいは初心者レベルですし、全体的にみても中級レベルで決して複雑ではありませんが、「聞かせる演奏」として自然な流れに仕上げるにはちょっと難しいと感じました。

10ページの長さの曲なので、想像するに1人1ページという分担で作曲したのではと思うのですが、どの部分を誰がつくったかは開示しておらず、それも含めて想像しながら弾いたり聴いたりして楽しんで欲しいということ。

前半の5ページは、リレー作曲したことを感じさせないほど自然な流れなのに対し、後半は荒波にのまれるがごとく目まぐるしくリズムパターンも曲調も変わるので、それを説得力のある表現でつなげて最後の一音までもっていくのが、譜面の印象以上に難易度が高いと感じました。

リレー作曲の面白さ

リレー作曲したことがわからない、自然な流れで仕上げられている前半がいいのか、個性がハッキリ主張され変化に富んだ後半のほうがいいのか?

あえてリレー形式で作曲した作品としては、演奏者にはチャレンジではあるけれど、個々の作曲家の個性が際立つ後半のほうが面白いのかもしれません。

皆さんはどのように感じるでしょうか?是非聴いて、そして弾いてみてください。

 

選曲のヒント

「次は何の曲を弾こうかな?」と、いろいろな曲を聞いたり迷ったりしている時間って、なんだかわくわくしませんか?

でも、自分で決めるとどうしても好みのタイプ・作曲家の曲に偏ってしまいがち。

それも悪くはないけれど、食わず嫌いと同じで、「弾かず嫌い」「聞かず嫌い」ということも結構あるものです。あまり好きでない曲でも、自分で弾いてみると意外にハマったり、聞いてるだけではわからなかった曲の魅力を見出したりすることもあります。

そこで、曲を選ぶ際に参考にして欲しいポイントをまとめてみました。

選曲の際の5つのポイント

  1. 聞いて選ぶのではなく必ず楽譜を見る
  2. 譜面が難しそうというだけであきらめない
  3. 知らない作曲家や曲をたくさん聞いてみる
  4. テーマを決めて選ぶ範囲を絞り込む
  5. テンポの速い曲をあきらめない

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それでは、ひとつずつ簡単に説明しましょう。

1.必ず楽譜を見てみる

聞いただけで「難しそう」とあきらめないで必ず楽譜を見てみること。難しそうに聞こえても、譜面を見たら思ったよりずっとシンプルで弾きやすかった、ということがよくあります。

2.譜面が難しそうに見えてもあきらめない

譜面を見て、例えば「オクターブが多いから無理。」「トリルが出てくるから大変そう。」など、自分の苦手な音型が出てくると尻込みしたくなりますが、それで弾きたい曲をあきらめてしまうのは勿体ないです。まずはトライしてみること!それでどうしても弾けないようなら、オクターブは上(または下)の音だけ、トリルは単音で、など弾きやすいように工夫してみましょう。

3.知らない作曲家や曲をたくさん聞いてみる

いろいろな作曲家のいろいろな曲を貪欲に聞いてみましょう!有名でない作品の中にも魅力的な曲はたくさんありますし、いろいろなタイプの曲を聞くことで、自分の好みもはっきりしてきて、感性にピンっと響く曲に巡り合うはずです。

4.テーマを決めるのも一つの方法

世の中には数えきれないほどの作曲家や作品があふれていて、目移りしてしまって決められない!と行き詰ったら、テーマを決めて範囲を絞り込むのもひとつの方法です。

私の生徒さんに「今年は○○を弾く年」というように、一年単位でひとりの作曲家をピックアップし、その作曲家の作品だけ集中して取り組むという方法でレパートリーを増やしているかたがいらっしゃいます。

そうすることで、じっくり時間をかけてその作曲家特有の音楽表現をマスターしたり、知識を深めたりすることができるのでとても良いアイデアだと思います。

5.テンポの速い曲をあきらめない

プロが弾いた演奏を聴いて「あんなに速く弾けないからこの曲は無理。」とあきらめてしまうこと、ありませんか?速くて自分には弾けないと思っても、好きな曲であればとにかくチャレンジしてみて欲しいと思います。

曲を仕上げていくうえで、その曲にふさわしいテンポで弾くことはもちろん大切ですが、それが”すべて”ではありません!

たとえば、軽快なテンポで有名なショパンの「子犬のワルツ」。プロのように速く弾けなくても、音量やタッチを工夫することで、エレガントで軽やかなワルツに仕上げることができます。

どんなにテンポの速い曲でも、作曲家がその曲で表現したかったことは「どれだけ速く指を動かせるか」ではないはず。そう考えると、テンポだけであきらめてしまうのは勿体ないですね。

 

 

一日一曲、365日分の楽しみ

「Withコロナ」の生活も一年となりました。家にいる時間が増え、今までやっていなかった新しいことを始めたという話しをよく耳にします。

私も最近始めたことがあり、思っていた以上に楽しいので、こちらでご紹介してみようと思いました。

一日一曲、日めくり感覚で楽しむ音楽

きっかけは、楽器屋さんで目にしたヤマハから出版されている「1日1曲、365日のクラシック」(近藤憲一/著)というこちらの本。

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 タイトルどおり、1月1日から12月31日まで365日分、バッハから最近の日本人作曲家まで幅広い時代の、ピアノ、オペラ、交響曲などあらゆるジャンルの作品を、1日1曲紹介してくれている本です。日めくりカレンダーのような構成になっているので、その日のページを読んで、YouTubeでその曲を聞くというのが私の日課となりました。

毎日、縁のある音楽との出会い

毎日続けられるポイントは、紹介文が1分もあれば読めてしまうぐらいコンパクトにまとめられていること。そして、選曲が適当に365曲ピックアップされているわけではなく、作曲家や演奏家の誕生日であったり、命日、初演された日など、しっかり関連づけられているということで興味を引かれ毎日楽しく続けられます。

「〇〇年前の今日、初演された曲」とか「〇〇前の今日、この曲の作曲家が亡くなった」という情報と結びつくと、知識として記憶に残りやすいですし、何より曲を聞いた時の感じかたが変わります。

知らないことを知る楽しみ

中にはもちろん知っている曲もたくさんありますが、紹介文に書かれている内容のひとつやふたつは”初耳”ということが必ずあるものです。

また、自分からあえて聞こうと思わないタイプの曲でも、日課なのでとりあえず紹介文読んで聞いてみると、不思議と今まで気づかなかった曲の魅力を感じたり。

一番楽しい日は、まったく知らない作曲家、作品が紹介されている日。知らないことを知っていくのは本当に楽しいものです!

本日(2月9日)の1曲は?

ちなみに、今日の一曲はヴェルディが作曲した最後の歌劇「ファルスタッフ」より”この世はすべて道化の世の中さ”です。128年前の今日、このオペラがミラノのスカラ座で初演されたそうです。

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 一年経ってこの本を読み終わったときに、365曲分のプチ知識が記憶に残っているといいのですが……。ご興味があったら是非みなさんも!

演奏が変わる!鍵盤からの指の離し方

ピアノを教え始めて30年以上経ちますが、いまだに「こういう時はこのように注意してあげると効果がでる!」とか「こういう表現で説明すると伝わりやすい!」といった気づきや発見があります。

弾けないで苦労していた生徒さんが、私のひとことでスッと弾けるようになったり、表現がしっくりきて喜んで下さると、心の中で密かに「今のは最高にいいアドバイスだった!」と自画自賛して嬉しくなります。

最近、私が一番効果を実感したアドバイスは「鍵盤をどのように弾くかではなく、鍵盤からどのように指を離すか(上げるか)意識する」ということです。

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無難にミスなく弾いているけれど、あまり表現にこだわらず、楽譜を追っているだけのように聞こえた生徒さんのレッスン中に出てきたアドバイスでした。

「音を出したあと、どうやって指を上げているか気をつけてみてください。」と言うと、途端に指の動きが重くなり「今まで打鍵については注意していたけれど、離し方なんて考えたこともなかった。」と最初は弾きにくそうにしていましたが、しばらくして慣れてくると「音を丁寧に聞くようになった。」と感激して、明らかに演奏も変わってきました。

それから何人もの生徒さんに同じアドバイスをしていますが、効果は絶大です!

指の離し方を意識すると、自ずと次の指運びも今まで以上に意識するようになるので、結果としてすべての音に意識がいくようになり、音量や音色のコントロールに敏感になり丁寧な演奏になります

 

レガートを上手に弾く

 特にレガートを弾く時などは、打鍵と同じぐらい、弾いた後の指の離し方を意識するとなめらかさが格段に良くなります。

レガートが上手にできないときは、次の音を弾いたのと同時に前の指が勢いよく鍵盤から離れている、または少しだけタイミングが速すぎることが原因の場合が多いです。鍵盤から指を離す(上げる)タイミングを少し遅らせるだけで、音のつながりが良くなりレガートらしさがでてきます


休符は音符以上に大切な役割を果たすことも

休符があるときも、その直前の音の指の離し方をしっかり意識してみてください。意外に「なんとなく」指を上げているものです。どのように音を切るかによって、休符の聞こえ方が変わってきます。音楽の中の休符(無音)は、鳴っている音以上に大切な役割を果たすこともあります。

 
練習するときのヒントに役立てていただければ嬉しいです。