Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

演奏が変わる!鍵盤からの指の離し方

ピアノを教え始めて30年以上経ちますが、いまだに「こういう時はこのように注意してあげると効果がでる!」とか「こういう表現で説明すると伝わりやすい!」といった気づきや発見があります。

弾けないで苦労していた生徒さんが、私のひとことでスッと弾けるようになったり、表現がしっくりきて喜んで下さると、心の中で密かに「今のは最高にいいアドバイスだった!」と自画自賛して嬉しくなります。

最近、私が一番効果を実感したアドバイスは「鍵盤をどのように弾くかではなく、鍵盤からどのように指を離すか(上げるか)意識する」ということです。

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無難にミスなく弾いているけれど、あまり表現にこだわらず、楽譜を追っているだけのように聞こえた生徒さんのレッスン中に出てきたアドバイスでした。

「音を出したあと、どうやって指を上げているか気をつけてみてください。」と言うと、途端に指の動きが重くなり「今まで打鍵については注意していたけれど、離し方なんて考えたこともなかった。」と最初は弾きにくそうにしていましたが、しばらくして慣れてくると「音を丁寧に聞くようになった。」と感激して、明らかに演奏も変わってきました。

それから何人もの生徒さんに同じアドバイスをしていますが、効果は絶大です!

指の離し方を意識すると、自ずと次の指運びも今まで以上に意識するようになるので、結果としてすべての音に意識がいくようになり、音量や音色のコントロールに敏感になり丁寧な演奏になります

 

レガートを上手に弾く

 特にレガートを弾く時などは、打鍵と同じぐらい、弾いた後の指の離し方を意識するとなめらかさが格段に良くなります。

レガートが上手にできないときは、次の音を弾いたのと同時に前の指が勢いよく鍵盤から離れている、または少しだけタイミングが速すぎることが原因の場合が多いです。鍵盤から指を離す(上げる)タイミングを少し遅らせるだけで、音のつながりが良くなりレガートらしさがでてきます


休符は音符以上に大切な役割を果たすことも

休符があるときも、その直前の音の指の離し方をしっかり意識してみてください。意外に「なんとなく」指を上げているものです。どのように音を切るかによって、休符の聞こえ方が変わってきます。音楽の中の休符(無音)は、鳴っている音以上に大切な役割を果たすこともあります。

 
練習するときのヒントに役立てていただければ嬉しいです。

ピアノ脱力法いろいろ

■ たかが脱力、されど脱力

「肩を上げないで!」「手首をやわらかく!」など、ピアノのレッスンを受けたことがある人は、誰でも一度は脱力の注意をされたことがあるのではないでしょうか?

楽譜に書かれた音符を見ながら弾く事に夢中になっていると、いつの間にか体に力が入り、気がつけば呼吸も浅くなっていたりします。そのような状態では、かたくて表情の乏しい音になってしまい演奏にプラスにならないばかりか、弾きにくくて体に負担をかけることにもなってしまいます。

日常生活のなかで私たちは、特に意識して力を入れたり抜いたりしながら体を動かしているわけではないので、いざそれを意識して動かそうとすると、自分の体が自分のものでないと感じるほどに言うことをきいてくれなかったりします。

でも、美しい音でピアノを弾きたい、なめらかな演奏をしたい、難しいパッセージを弾きこなしたい……と思うのであれば、少しずつでも努力して自分の体をコントロールして、上手に脱力することを学んでいかなければなりません。

ピアノ演奏における脱力や体の使いかたに関する本はいろいろと出版されていますが、今日はその中から、私がレッスンをする際の参考にしている本をご紹介します。

まずはこちら。

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 この本、ぱっと開くと医学書みたいなイラストがたくさん載っています。

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 具体的に、体のどの部分の筋肉が緊張し、そこの緊張をゆるめるためにどうすればいいのかなど詳しく解説されているので、しっかりと理論的に体の使い方を学びたいタイプの人に役に立ちます。

もう少し実践的でわかりやすい本でおすすめなのは、こちら。その名も「ピアノ骨体操」!

音が変わる! 演奏がラクになる! ピアノ骨体操

音が変わる! 演奏がラクになる! ピアノ骨体操

 

「筋肉を無理に使わず、骨をたたむ」という日本古来の所作や古武術に由来した動きを習得することにより、疲れにくく感覚に優れた身体を作り上がるナンバ術というものを、ピアノ演奏に応用した桐朋学園秘伝のメソッドだそうです。

目次には「12の骨体操」「7つのムーブメント」など、一見ただの体をほぐす体操のガイドブックのような見出しが並んでいますが、ピアノを弾くという動作に関連するさまざまな体の部位を意識した体操が紹介されていて、改めて、ピアノを弾くのは指先だけの動作ではないことを認識させられます。

出版社のサイトでは、立ち読みもできるので興味があればのぞいてみてください。

音が変わる! 演奏がラクになる! ピアノ骨体操 - 音楽之友社

 

ピアノ演奏における脱力に関する本は、他にこのようなものがあります。

ピアノ脱力奏法ガイドブック 1 <理論と練習方法>

ピアノ脱力奏法ガイドブック 1 <理論と練習方法>

 
実力が120%発揮できる!  ピアノがうまくなるからだ作りワークブック

実力が120%発揮できる! ピアノがうまくなるからだ作りワークブック

 
原田敦子 ピアノ基礎テクニック ピアノテクニック12か月 ~脱力のタッチのために~

原田敦子 ピアノ基礎テクニック ピアノテクニック12か月 ~脱力のタッチのために~

 

 ■ 一冊に頼らず何冊も読んでみる

いずれにしても、脱力のようなことは本を読んだからといってすぐに習得できるものではありませんし、書かれていることすべてが読んでいる人にマッチするとは限りません

私自身、読んでいて「そうそう、そのとおり!」と思う説明もあれば、同じ本のなかでも、説明された動き方では逆に弾きづらく、説明と逆の向きの動きをしたほうが心地よく弾けるといったこともありました。本に書かれていることはヒントになりますが絶対的なものではありません

一人一人、体の大きさや筋力、動きの特徴など違うので、一冊だけに頼って書かれていることを忠実に学ぼうとするのではなく、何冊か読みあわせいろいろと試してみるべきです。そうしているうちに、どの説明が理解しやすく、自分の体に合いそうかわかってきます。根気よく続けることで、徐々に自分の体の動きがコントロールできるようになり、やがてそれが心地よく演奏するための脱力につながっていきます。

■ 脱力できているかどうかは響きで判断する

的確に脱力ができているのかどうかは、疲れないか、手首や腕、肩に痛みが出ないかである程度判断できますが、たまに、明らかに脱力ができていないでガチガチの体のまま弾いているのに「疲れない」「どこも痛くならない」という人がいます。でも、たいていそのような人の奏でる音は美しくはありません。3分聞いていたら、頭が痛くなるような音なのです。

しっかり脱力できている人の演奏する音は、伸びがよく美しい響きをもっています。なので、自分の奏でる音に耳を澄まし美しい響きを作る意識を高めることも、脱力をマスターすることへつながる大切なポイントです。

心あたたまるイギリス音楽コンサートのご案内

イギリスの作曲家で真っ先に頭に浮かぶのは誰でしょうか?たいていの人は「威風堂々」や「愛の挨拶」を作ったエルガーではないでしょうか。でも、他にもこ~~~んなにいろいろと素敵な曲があるんですよ!と、イギリス音楽をこよなく愛する友人が企画した<英国音楽シリーズ>コンサートのご案内です。

<英国音楽シリーズ 第5弾>
愛の挨拶 ~Salut d'amour~

西原生由理(ヴァイオリン)
中内真理(オーボエ
飯田裕之(バリトン
内田朋子(ピアノ)

2019年3月22日(金)
場所:めぐろパーシモンホール 小ホール
18:30/開場、19:00/開演
一般:3,500円、ペア券:6,000円
チケット:ASAアーティストサポート協会(Tel&Fax/048-628-2419)

5回目となる今回は、待ち遠しい春の訪れを感じられる軽いサロン風の音楽を集めたプログラムとのことで、メルヘン系の「孔雀のパイ」(ハウエルズ作曲)や涙腺の潤みそうな「エレジー」(フィンジ作曲)など、ふだんあまり耳にしないけれど、是非一度は聞いて欲しいというお勧めの曲が並んでいます。

ヴァイオリン、オーボエバリトン、ピアノというユニークな組み合わせのアンサンブルなうえに、プログラムには私も聞いたことがない曲が多く入っているのでとても楽しみです!皆さまもご興味があったら是非いらしてみてください。

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同じ楽譜でも演奏に違いが出る理由

以前アップしたAll Aboutの記事「ピアノで同じ楽譜を弾いても演奏に違いがでる理由」内に、実際に聞き比べて頂くためのリンクを追加しました。

allabout.co.jp

同じ楽譜を見て弾いても、演奏に違いが出るのは当たり前ですが、具体的にどういう点によって違いがでるのかじっくり考えたことはあまりないのではないでしょうか?

今回、聞き比べに選んだのはショパン作曲の前奏曲 第7番。テクニック的には難しくない曲をプロのピアニストが弾いてもこれだけ差がでます!という例として、短くて最後まで聞いて頂けるのでこの曲にしました。太田胃酸のCMでお馴染みというのも理由のひとつです。

All Aboutの記事内では、個人がアップしている動画は使用できないので、リンクの選択が限られてしまいましたが、ご興味があれば更にいろいろなピアニストの演奏も聞き比べてみてください。

聞き比べをするメリット

演奏者によって曲の印象が変わりますが、どの演奏が良い悪いということではなく、好き嫌いの問題です。

聞き比べをするときに、この人の演奏よりあの人の演奏のココが好き、こういうところは好きでない、というようにリストアップしてみると、今まで自覚していなかった自分の好みがわかったり、自分が演奏する際に個性を強調する表現につながったりします。
鑑賞として聞き比べるのとは少し違って「お勉強」的な聞き方になってしまいますが、ピアノ練習の一環と考えれば必ず得るものがあります。是非お試しください。

暗譜は苦手?

だいぶサボってしまいましたが、久しぶりに新しい記事をアップしました。

趣味で楽しむピアノは、必ずしも暗譜で弾いたほうがいいとは思いませんが、いつでもどこでも楽譜なしでパッと弾けるレパートリーを何曲かもっていると素敵ですね!


練習しているうちにいつの間にか楽譜を見ないでも弾けるようになったというのが理想的ですが、たいていの人はそれなりに覚える努力をしなければなりません。そのために役立つ練習方法をまとめてみました。

ひとつでも暗譜のヒントになればいいのですが~♪

「卵形の手で弾く」はタブーなのか?

先日、教室のメンバーから「引越しをして本を整理していたら、同じ本が二冊出てきたので一冊もらってください。」とこちらの本を頂きました。

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以前買って読んだのを忘れて、また同じ本を買ってしまったとのこと。私も最近、日常生活のあちこちで自分でも信じられないようなポケをするので、まわりの人のこのような失敗談を聞くと妙にホッとします。

さて、こちらの本。「ピアノをはじめたい人の超入門書」ということで、ピアノの種類、値段、教室の探し方や演奏の際の体の使い方、上達のコツ、更にはピアノを弾くためにいい食べ物 (!?) など、さまざまな角度からピアノに関するトピックが網羅されていて、入門者に限らずピアノに興味のある人なら誰でも楽しく読める雑学的内容となっています。ユーモアたっぷりのイラストも添えられ、「ピアノって難しそう。習おうかどうしようか?」と迷っている人のハードルをぐんと下げてくれそうです。

【目次】

第1章:知ってると大違い!あとで差がつくピアノの "新" 常識

第2章:楽譜の約束事は意外とシンプル!覚えて楽しい "超" 常識

第3章:知って選ぼう!楽器の王様・ピアノの "基" 常識

第4章:指・腕だけじゃない!ピアノを弾ける体を作る "楽" 常識

第5章:出逢いがすべてを決める!後悔しないピアノ教室の "選" 常識

第6章:もう挫折しない!素朴な疑問を一気に解決 "知" 常識

 各章が更にたくさんのトピックに分けられているのですが、その中のひとつに「卵形の手で弾く」は古い常識 という項目があり、思わず笑ってしまいました。「卵形の手」という表現、懐かしいです。

「卵形の手で弾く」はタブーなのか?

確かに、ひと昔前までは「卵形の手で弾く」がピアノの鉄則のように言われていました。私も習い始めた頃は、紙を丸めたものをセロテープで手の平に貼り付けられ、その紙がつぶれないような形をキープしながら弾くように教えられたものです。

この本にも書かれているとおり、これは日本にピアノが入ってきて間もない頃に広まった奏法がそのまま教え継がれていったもので、今では "古い常識" (必ずしもピアノを弾くベストの基本フォームではない)という考えが一般的です。手を丸めると、指先が垂直に鍵盤に当たるのでハッキリしたかたい音色になりがちで、また指の動きも大きくなるので手首や腕に負担がかかり疲れやすくなります。

今は、意識的に指先をまるめたフォームではなく、自然なカーブで緩く開いたフォームが基本のスタイルとして一般的に推奨されていますが、では「卵形の手で弾く」は絶対タブーなのかというと必ずしもそうではありません。

表現力豊かな演奏をするためには、さまざまなニュアンスの音色が必要です。曲のなかには、やわらかい音色ばかりでなく、硬質で他より際立つ音色が適した場面も多々あります。そのような箇所では、部分的に卵形の手にして指先で打鍵することもあります。ただし、この時に気をつけなければいけないのは、手首や腕がそれなりに脱力できていること。ガチガチに力が入ったまま卵形の手にしてピアノを弾くと、もうそれは『音楽的な音』とはほど遠い『汚い音色=騒音』になってしまうので気をつけてくださいね。

ALL ドビュッシー・プログラムのリサイタル

フランスを代表するピアニストの一人、パスカル・ロジェの全曲ドビュッシー・プログラムのリサイタルへ行ってきました。

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神奈川芸術協会主催のアフタヌーンコンサートシリーズの一環として開かれたリサイタル。誰もが聴いたことのある名曲をトップアーティストで!というキャッチコピーのもと、クラシック音楽初心者でも楽しめる耳馴染みのある名曲をメインに構成されたプログラムによるコンサートシリーズ。

ピアノに限らず、声楽やアンサンブルなどバラエティ豊かなコンサートが予定されていて、それがすべてトップ奏者による演奏にもかかわらず通常のチケット価格よりもリーズナブル!そして週末昼間に開催されるということもあり、今回のリサイタルも2000名近く入るミューザ川崎シンフォニーホールはほぼ満席に近いような盛況ぶりでした。

PROGRAM

アラベスク 第1番
「版画」より "雨の庭"
「映像第1集」より "水の反映"
「映像第2集」より "金色の魚"
前奏曲集 第1集」より "沈める寺"
子供の領分」全6曲

       ******
「ベルガマスク組曲」全4曲

「映像第2集」より "そして月は廃寺に落ちる"
前奏曲集第2集」より "月の光が降り注ぐテラス"
前奏曲集第1集」より "亜麻色の髪の乙女"
「版画」より "グラナダの夕べ"
喜びの島

誰もが一度は耳にしたことがあるドビュッシーピアノ曲というと、やはり「月の光」と「亜麻色の髪の乙女」でしょうか。この2曲に限らずドビュッシーの曲はどれも、ピアノがいかに多彩で繊細な音色を奏でられる素晴らしい楽器なのか、その魅力を存分に引き出してくれます。

ロジェの演奏は、どんなにハーモニーが複雑になり音量が上がり動きが大きくなっても、決して『重厚』という感じではなく『広がり』をイメージさせるもので、「なるほど、フランス音楽とはこういうものか!」と改めて認識させられました。

ドビュッシーの作品は、曲名と響きがぴったりとマッチし、曲を知らなくても聴きながらイマジネーションを膨らませやすいので、確かにクラシック音楽に詳しくなくても楽しめるプログラムだと思います。ただ、正直なところ、コンサートシリーズのセット券を購入して、ドビュッシーピアノ曲だからということに特にこだわりなく聴きに来たお客さまにとって「ALLドビュッシー・プログラム」は、睡魔に襲われず最初から最後まで鑑賞するには少し大変だったかもしれません。

ドビュッシーの音楽の雰囲気を楽しんでもらいたいから」というロジェの希望により、曲間の拍手はしないようにとのことだったので、前半・後半のそれぞれ約45分間、ひたすらピアノの響きに漂うドビュッシー特有の水の ”ゆらぎ” や光の反射、静寂さなどに心地よさを感じ、私の周りはこっくりこっくり船をこぎ始める人が続出。後半プログラムの「そして月は廃寺に落ちる」「月の光が降り注ぐテラス」あたりにくると、背後からは気持ちよさそうな大きな寝息が……。

物騒なニュースの多い昨今、そして30℃超えの外から涼しい屋内で週末の午後のひととき、このうえなく美しいピアノの響きをBGMにしばし安らかに眠りたくなる気持ちもわかるので、いつもなら振り返りガン見して不快感をあらわにするところですが、ロジェの演奏する極上のドビュッシーに全力で耳を集中させ、どうにか最後までコンサートを楽しむことが出来ました。

アンコール曲は、サティの「ジムノペティ」1番とドビュッシー前奏曲集 第1集」より "ミンストレル"。
ドビュッシーでお腹いっぱいになった後のサティは、実に新鮮に感じ、ドビュッシーとはまたひと味違ったフランス音楽の魅力を満喫させてくれたのでした。