Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

「卵形の手で弾く」はタブーなのか?

先日、教室のメンバーから「引越しをして本を整理していたら、同じ本が二冊出てきたので一冊もらってください。」とこちらの本を頂きました。

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以前買って読んだのを忘れて、また同じ本を買ってしまったとのこと。私も最近、日常生活のあちこちで自分でも信じられないようなポケをするので、まわりの人のこのような失敗談を聞くと妙にホッとします。

さて、こちらの本。「ピアノをはじめたい人の超入門書」ということで、ピアノの種類、値段、教室の探し方や演奏の際の体の使い方、上達のコツ、更にはピアノを弾くためにいい食べ物 (!?) など、さまざまな角度からピアノに関するトピックが網羅されていて、入門者に限らずピアノに興味のある人なら誰でも楽しく読める雑学的内容となっています。ユーモアたっぷりのイラストも添えられ、「ピアノって難しそう。習おうかどうしようか?」と迷っている人のハードルをぐんと下げてくれそうです。

【目次】

第1章:知ってると大違い!あとで差がつくピアノの "新" 常識

第2章:楽譜の約束事は意外とシンプル!覚えて楽しい "超" 常識

第3章:知って選ぼう!楽器の王様・ピアノの "基" 常識

第4章:指・腕だけじゃない!ピアノを弾ける体を作る "楽" 常識

第5章:出逢いがすべてを決める!後悔しないピアノ教室の "選" 常識

第6章:もう挫折しない!素朴な疑問を一気に解決 "知" 常識

 各章が更にたくさんのトピックに分けられているのですが、その中のひとつに「卵形の手で弾く」は古い常識 という項目があり、思わず笑ってしまいました。「卵形の手」という表現、懐かしいです。

「卵形の手で弾く」はタブーなのか?

確かに、ひと昔前までは「卵形の手で弾く」がピアノの鉄則のように言われていました。私も習い始めた頃は、紙を丸めたものをセロテープで手の平に貼り付けられ、その紙がつぶれないような形をキープしながら弾くように教えられたものです。

この本にも書かれているとおり、これは日本にピアノが入ってきて間もない頃に広まった奏法がそのまま教え継がれていったもので、今では "古い常識" (必ずしもピアノを弾くベストの基本フォームではない)という考えが一般的です。手を丸めると、指先が垂直に鍵盤に当たるのでハッキリしたかたい音色になりがちで、また指の動きも大きくなるので手首や腕に負担がかかり疲れやすくなります。

今は、意識的に指先をまるめたフォームではなく、自然なカーブで緩く開いたフォームが基本のスタイルとして一般的に推奨されていますが、では「卵形の手で弾く」は絶対タブーなのかというと必ずしもそうではありません。

表現力豊かな演奏をするためには、さまざまなニュアンスの音色が必要です。曲のなかには、やわらかい音色ばかりでなく、硬質で他より際立つ音色が適した場面も多々あります。そのような箇所では、部分的に卵形の手にして指先で打鍵することもあります。ただし、この時に気をつけなければいけないのは、手首や腕がそれなりに脱力できていること。ガチガチに力が入ったまま卵形の手にしてピアノを弾くと、もうそれは『音楽的な音』とはほど遠い『汚い音色=騒音』になってしまうので気をつけてくださいね。