ピアノ脱力法いろいろ
■ たかが脱力、されど脱力
「肩を上げないで!」「手首をやわらかく!」など、ピアノのレッスンを受けたことがある人は、誰でも一度は脱力の注意をされたことがあるのではないでしょうか?
楽譜に書かれた音符を見ながら弾く事に夢中になっていると、いつの間にか体に力が入り、気がつけば呼吸も浅くなっていたりします。そのような状態では、かたくて表情の乏しい音になってしまい演奏にプラスにならないばかりか、弾きにくくて体に負担をかけることにもなってしまいます。
日常生活のなかで私たちは、特に意識して力を入れたり抜いたりしながら体を動かしているわけではないので、いざそれを意識して動かそうとすると、自分の体が自分のものでないと感じるほどに言うことをきいてくれなかったりします。
でも、美しい音でピアノを弾きたい、なめらかな演奏をしたい、難しいパッセージを弾きこなしたい……と思うのであれば、少しずつでも努力して自分の体をコントロールして、上手に脱力することを学んでいかなければなりません。
ピアノ演奏における脱力や体の使いかたに関する本はいろいろと出版されていますが、今日はその中から、私がレッスンをする際の参考にしている本をご紹介します。
まずはこちら。
この本、ぱっと開くと医学書みたいなイラストがたくさん載っています。
具体的に、体のどの部分の筋肉が緊張し、そこの緊張をゆるめるためにどうすればいいのかなど詳しく解説されているので、しっかりと理論的に体の使い方を学びたいタイプの人に役に立ちます。
もう少し実践的でわかりやすい本でおすすめなのは、こちら。その名も「ピアノ骨体操」!
「筋肉を無理に使わず、骨をたたむ」という日本古来の所作や古武術に由来した動きを習得することにより、疲れにくく感覚に優れた身体を作り上がるナンバ術というものを、ピアノ演奏に応用した桐朋学園秘伝のメソッドだそうです。
目次には「12の骨体操」「7つのムーブメント」など、一見ただの体をほぐす体操のガイドブックのような見出しが並んでいますが、ピアノを弾くという動作に関連するさまざまな体の部位を意識した体操が紹介されていて、改めて、ピアノを弾くのは指先だけの動作ではないことを認識させられます。
出版社のサイトでは、立ち読みもできるので興味があればのぞいてみてください。
音が変わる! 演奏がラクになる! ピアノ骨体操 - 音楽之友社
ピアノ演奏における脱力に関する本は、他にこのようなものがあります。
実力が120%発揮できる! ピアノがうまくなるからだ作りワークブック
- 作者: かわかみひろひこ
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 2019/02/23
- メディア: 単行本
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原田敦子 ピアノ基礎テクニック ピアノテクニック12か月 ~脱力のタッチのために~
- 作者: 原田敦子
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 楽譜
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■ 一冊に頼らず何冊も読んでみる
いずれにしても、脱力のようなことは本を読んだからといってすぐに習得できるものではありませんし、書かれていることすべてが読んでいる人にマッチするとは限りません。
私自身、読んでいて「そうそう、そのとおり!」と思う説明もあれば、同じ本のなかでも、説明された動き方では逆に弾きづらく、説明と逆の向きの動きをしたほうが心地よく弾けるといったこともありました。本に書かれていることはヒントになりますが絶対的なものではありません。
一人一人、体の大きさや筋力、動きの特徴など違うので、一冊だけに頼って書かれていることを忠実に学ぼうとするのではなく、何冊か読みあわせいろいろと試してみるべきです。そうしているうちに、どの説明が理解しやすく、自分の体に合いそうかわかってきます。根気よく続けることで、徐々に自分の体の動きがコントロールできるようになり、やがてそれが心地よく演奏するための脱力につながっていきます。
■ 脱力できているかどうかは響きで判断する
的確に脱力ができているのかどうかは、疲れないか、手首や腕、肩に痛みが出ないかである程度判断できますが、たまに、明らかに脱力ができていないでガチガチの体のまま弾いているのに「疲れない」「どこも痛くならない」という人がいます。でも、たいていそのような人の奏でる音は美しくはありません。3分聞いていたら、頭が痛くなるような音なのです。
しっかり脱力できている人の演奏する音は、伸びがよく美しい響きをもっています。なので、自分の奏でる音に耳を澄まし美しい響きを作る意識を高めることも、脱力をマスターすることへつながる大切なポイントです。