音楽は言語みたいなもの
先日、マエストロ・プロフォンドの『すてきにピアノ』(全5巻)の第3巻「完璧な練習法」をご紹介しましたが、このようなノウハウ本はレッスンの参考になるので、私も日頃からできるだけ目を通すようにしています。特に良いと思った本は、こちらや教室のブログでもご紹介していますが、先日紹介した「完璧な練習法」を早速購入して読まれた生徒さんがいて、明らかに前回より上手になっていて感激しました。なんでも「読んだら胸に刺さる言葉がたくさんあった。これはいけない!と思って今までの練習の方法を改めた。」とのことでした。
実際にこの本の効果を確認できたこともあり、第1巻「ペダリング」と第2巻「豊かなタッチ」も読んでみることにしました。
マンガだと子供向けという印象が強いですが、イラストのおかげで言葉だけでは理解しづらい内容もわかりやすく、大人が読んでも役に立つ知識が盛り込まれています。
たとえばペダルについて、初級レベルでは「踏む」「上げる」の単純な動作をマスターすればOKだとしても、曲の難易度が上がりそれに見合った表現が求められるようになると、踏む深さやタイミングにも違いをつけることが必要になってきます。これは、文章だけではなかなかイメージしづらいのでイラストは大きな助けになります。
また第2巻「豊かなタッチ」では、音に対してのイメージの作り方や、音色(ニュアンス)の違いとその打鍵の仕方などが説明されています。楽譜に書かれている音を正しく弾くことはもちろん大切ですが、音に表情をつけなければ本当の意味での「音楽」にはなりません。
レッスン中に「もっとメロディーを歌って!」と言うことがよくあるのですが、「歌っているつもりだけれど……」または「どうすればいいのかわからない。」と言われることが結構あります。そのような時、私はよく朗読やお芝居のセリフを例に挙げて説明しますが、同じような内容を噛み砕いてとてもわかりやすく説明してある箇所があったのでご紹介しておきましょう。
言葉を表すときの声の使い方やジェスチャーは、音楽を表すときの扱い方や組み立て方に似ています。
声の高さ、音量を上げたり下げたり……
言葉を切ったりくっつけたり……
呼吸を早くとったり深くゆっくりとったり……ある意味や音節を強調したり……
こうやって自分の意志を表現することができますね。
音楽も言語と同様に、どのように歌うかで意味が違ってきます。
たとえば「ぼくはあなたを愛してる」という文章。
「ぼくは あなたを 愛してる」
「ぼくは あなたを愛してる」
「ぼくは あなたを愛してる」
「ぼくは あなたを愛してる?」
「ぼくは あなたを愛してる???」
「ぼくは あなたを愛してる???」
「ぼくは あなたを愛してる」
「ぼくはぁー あなたをぉー 愛してるぅー」
「ぼくはー あなたをー 愛してる!!!」
このように文字で書かれたものを見ると、強調する箇所が変わると文章のニュアンスが微妙に変化するのが一目瞭然!メロディーも、どの部分を強調して聞かせたいのか、音量だけでなく抑揚や音色、イントネーションの組み合わせ次第で印象が変わります。
自分ではやっているつもりでも、案外「ぼくはあなたをあいしてる」と一本調子に聞こえているもの。ちょっと大袈裟すぎるかな?と思うぐらいで、ようやく他人に伝わると思って間違いありません。
そもそも「どこを強調すればいいのかわからない。」という場合は、鼻歌でもいいのでメロディーを歌ってみてください。自然に盛り上げたくなる箇所がわかりますよ。