ピアノを続けるかどうか迷った時におすすめの本
先日、『あなたがピアノを続けるべき11の理由』という本を読みました。タイトルには「続けるべき理由」と強く押し付けるようなニュアンスの言葉が使われていますが、内容は決して説教調のものではありません。プロの音楽家だけでなく落語家や科学者など11人の著名人のピアノにまつわるエピソードが紹介され、自分にとってピアノとは、そしてピアノを弾き続ける意義に触れ、最終的には読む人に考えるヒントを与えるような内容になっています。
ちょうど私は教室の生徒さんからピアノを続けるかどうか悩んでいるという相談を受けたばかりだったこともあり、興味深くこの本を読みました。
生徒さんの悩みは次のようなものでした。「ピアノは好きなのだけれど、どうしてもこつこつと熱心に練習する気にはなれない。練習しないから上手にならない。上手にならないからこのままレッスンに通い続けていても意味ないんじゃないかと思う。でもレッスンを止めてしまうと全然ピアノを弾かなくなりそうでその勇気もなく、この先どうしていいのかわからない。」
練習しなければ上手にならないのは当たり前ですし、そのことはご本人もわかっていらっしゃいます。私の方は、生徒さんが練習していなくてもレッスンに来ることが楽しいということであれば全然構わないのですが、ご本人がそのことに疑問をもたれるのであれば解決策を考えなければいけません。そこで私は、ふたつの選択肢を提案しました。
- 心機一転、練習に励んで上達を目指す
- 思い切ってレッスンを止めてみる
もちろん、私は1の「練習に励んで上達を目指す」を選んで頂きたいですが、そのかたが突然練習に意欲をもつとも思えなかったので、冷たいようではありますが、思い切って一旦レッスンを止めるほうをおすすめしました。
それでピアノを全然弾かなくなるのであれば、たぶんそのかたにとってピアノはその程度の「好き」だったのだと思います。本当にピアノが好きならば、レッスンがあろうがなかろうが全然弾かなくなるようなことはないはずです。
もし弾き方がわからなかったり、レッスンを受けたくなったらいつでもご連絡下さい、とお話ししてしばらく様子をみるということになりました。
そのような思い切ったアドバイスが出来たのは、タイミングよくこの本を読んでいたおかげでもあります。もともと私は、趣味で習う大人のピアノは楽しくなければ続かないので、無理はしない、イヤなことはしない、を教室の皆さんにはお願いしています。人間ですから、誰でも気分に多少の浮き沈みはありますし、長い年月の間には生活パターンも変化します。その時その時の状況に合わせたピアノの楽しみ方があると思います。
この本の中で私が一番自分と考えが近いと感じたのは、音楽家・秦万里子さんが書かれた『何事も、挫折していけないことなどない。ピアノはいつやめてもいいし、いつ戻ってもいい』というものでした。以下、冒頭部分を引用させて頂きます。
もしもあなたがピアノに何の目標も感じることができず、練習がつらいだけならば、私はピアノのレッスンをやる必要はないと思います。ピアノを続ける「べき」人なんて、どこにもいないのではないでしょうか?何事も、挫折していけないことなどないと思います。やめてみて、「しまった!」「やっぱりやめなければよかった!」と思ったら、その時に再開すればいいのです。多少指の動きが悪くなっても、一度「やめなきゃよかった」と思う人は、そのくらいすぐに挽回できるでしょう。むしろ、いい刺激になるかもしれません。
(「あなたがピアノを続けるべき11の理由」より引用)
ピアノを弾き続けることに迷いが生じたら、是非読んでみてください。11人のエピソードのなかに、あなたの心に響くメッセージが見つかるかもしれません。