Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

見慣れた楽譜から離れる

誰でもうっかりして、自分でも信じられないようなことをしてしまうことがあるもの。先日、レッスンにいらして「あっ、楽譜を持ってくるのを忘れた!」と大慌てをした生徒さんがいらっしゃいました。

 仕方なく私の楽譜を使うことになったのですが、出版社が違うので生徒さんの楽譜では6ページにゆったりレイアウトされている曲が、私の楽譜では4ページにおさめられていて小さく詰まったように見えます。そのうえ、フレーズやちょっとしたニュアンスの表記が違ったり、レッスンで書き込まれた注意点などもないので、前回のレッスンでは流れを止めずに上手に弾けていたにもかかわらず、1~2ヶ月前に戻ったような不安定な演奏になってしまいました。

譜読みの段階ならともかく、何ヶ月も弾きこんできた曲だっただけに最初はがっかりしていた生徒さんでしたが、何回か弾いているうちに「見慣れた自分の楽譜で意識しなくなっていたことに気づかされた!」と表情が明るくなっていきました。

なんでも、いつもと違う楽譜を使って弾くことで緊張感が増し、いつもよりジッと楽譜を見ながら弾いたので、長く練習しているうちにあまり気を払わなくなっていたフレーズや音のニュアンス、強弱の表記を改めて確認し、もっとしっかり表現しないといけないと感じたのだとか。また、指使いやペダルの踏みかえなども、もう楽譜を頼りにしなくても身についていると思っていたものが、まだしっかり覚えきっていなかったことがわかり、今後の練習の課題がはっきりしたと喜んでいらっしゃいました。

楽譜に限らず何でもそうですが、見慣れたものほど細かいところは漫然と見ていて注意がいかなくなるもの。そう考えると、曲の仕上げの段階で、一度 見慣れた楽譜から離れて違う楽譜を使って弾いてみるのもいいかもしれませんね!

「ピンチはチャンス」「怪我の功名」と言いながら大笑いして帰って行かれた生徒さん。楽譜を忘れてしまったことをポジティブな方向に見事に切りかえたその姿勢は本当に立派!きっと次回はグッと上手になられていることでしょう。

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