Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

日本語訳された曲のタイトル

先日、シューマンの『森の情景』第5曲目のレッスンをしていた時のこと。譜面に書かれたテンポと曲のタイトルが、どうも自分の中でしっくりこないというご相談を受けました。

その楽譜では、ドイツ語の曲のタイトル"Freundliche Landschaft" が「なつかしい風景」と訳されており、テンポ表示はSchnell(速く)四分音符=約160と記されていました。でも、このテンポで実際に弾いてみると、とても軽快で生き生きした明るい感じになり、「なつかしい」という言葉から受ける印象と違った雰囲気になる…ということでした。

f:id:aobapiano:20151013130822j:plain

確かに私も「なつかしい風景」という言葉から思い浮かべるのは、少しセピア色がかったのんびりと穏やかな風景で、スピード感がある生き生きとしたイメージではありません。

そこで、違う出版社の楽譜をチェックしてみたところ「親しげな風景」と「親しみのある風景」という微妙に違う訳のタイトルがつけられていました。「なつかしい」という言葉から受ける印象とは少し違ってきますね。ちなみに、第4曲目も「呪われた場所」「不気味な場所」「気味の悪い場所」の3バージョンの訳がありました。

もちろんどれも間違いではありませんが、訳され方によって思い描く風景や印象が少し変わり、それが演奏の際にテンポ設定だけではなく、曲中のちょっとした表現にも違いを及ぼす可能性があります。

日本語訳されたタイトルがつけられた曲に取り組む際には、自分が持っている楽譜以外ではどのように訳されているか是非チェックしてみてください。微妙なニュアンスの違いが、表現の幅を広げるきっかけとなるかもしれません!