Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

ピアノで奏でる雨の響き <1>

梅雨入りから2週間。でも今のところ、私の住む横浜はカラッと晴れる日はないまでも、シトシト雨続きというわけでもなく、あまり梅雨を意識せずに過ごしています。

先日、生徒さんと梅雨絡みの話をしていて「雨を表現したピアノ曲ってたくさんあるのでしょうか?」というご質問を受けました。考えてみると、『水』が入っている曲名は結構思い浮かぶのですが『雨』はなかなか出て来ない!そこで、ちょっと調べてみることに。

ところが頑張って調べてみたものの、やはり『雨』が曲名に入ったピアノ曲はほんの数曲しか見つからず……。でもせっかく調べたので、こちらで今日から1曲ずつご紹介していきたいと思います。

 
ショパン:雨だれの前奏曲

まずは、ピアノ愛好家ならたぶんすぐに思い浮かぶショパンの「雨だれの前奏曲」。「24の前奏曲集」の15曲目で、ショパンが恋人のジョルジュ・サンドと一緒に訪れていたスペインのマジョルカ島で作られました。

恋人と楽しく過ごしていた楽園が雨季に入り、気候の変化から持病の結核に苦しむショパン。当時スペインでは、結核は死に至る伝染病として恐れられていたため、借りていた別荘を追い出され、修道院に身を寄せていました。来る日も来る日も雨が降り、狭い部屋に閉じ籠り病と戦うショパンの唯一の慰めは、パリから取り寄せたお気に入りのプレイエルのピアノ。

そのような状況の中で作られた「雨だれの前奏曲」について、サンドは『ショパンは次第に夢と現実の境がなくなり、屋根に落ちる雨のしずくを独自の創造力で歌に変えた』と書き残しています。「雨だれ(Raindrop)」というタイトルは、ショパン本人がつけたものではなく、サンドのこのような文献や曲想が雨のしずくを思い起こさせることからつけられたものです。

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ショパンが「雨だれの前奏曲」を作曲したヴァルデモサの修道院

ここで、ポリーニとポゴレリッチの演奏する「雨だれの前奏曲」をご紹介します。二人とも私が学生時代に、演奏だけでなくルックスなどミーハー的な意味でもとても人気のあったピアニストで、来日すると友人たちと競って良い席のチケットを買い求めたものです。今ではポリーニは、最も高く評価される現役ピアニストの一人としての地位を築き、しばしば独特な演奏スタイルが論争を巻き起こしたポゴレリッチも、実力個性派としてキャリアを確立しています。

実はこの二人の「雨だれの前奏曲」、なんと演奏時間が2分以上も違うんです!!私自身が演奏する時にはちょうどこの中間ぐらいのテンポが一番しっくりくるのですが、弾くのと聴くのはまた違います。必ずしも自分の演奏に近いものを気に入るとは限りません。

果たして皆さんは、ポリーニとポゴレリッチ、どちらの演奏がお好みでしょうか?是非聴き比べてみてください(どちらを先に聴くかでも、印象がかなり変わると思います。)

ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ(Maurizio Pollini)



ピアノ:イーヴォ・ポゴレリッチ(Ivo Pogorelich)