Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

目に見える音楽

悩み相談:曲を弾いている時に他のことを考えたり、飽きてしまう

 

先日、「曲を弾いている途中に他のことが頭に浮かんできてしまい集中できない」…という相談を受けました。気がつくと、今晩のおかずのことやら、明日の予定やら、そんな雑念がいろいろ浮かんでくるのだそうです。「他の皆さんは、ピアノを弾いている時、曲のことだけ考えているのでしょうか?」という質問。

改めて考えたことはありませんが、ふだんピアノを練習している時には私も「あっ、そういえばアレをやっておかなくちゃ!」とか「明日アレを買って来よう!」とか、そんなことを思い浮かべることがあります。そのぐらいのことは、誰でもあるのではないかと思うのですが、相談されたかたはどうやらそれより少し深刻で、弾いているうちに飽きてきてしまうらしいのです。とりあえずひととおり弾けてしまうと、次に何を練習したらいいのかわからないと言います。

他のことを考えたり、飽きてしまう理由

 弾いている途中で何度も止まってしまったり、間違った音を弾いてしまうという段階では、止まらずに弾けるようにする、間違った音を弾かないようにする、という明確な練習目標があります。でも、そこそこ弾けてしまえば次の目標は「表現を深める」という漠然としたプロセスなので、「どんなふうに練習すればいいのかわからない」→「つまらない」「飽きてしまう」というのもわからなくはありません。

そこで、その漠然とした「表現を深める」というプロセスを少しでも具体的にイメージしやすくするために、ふたつの提案をしてみました。

表現を深める(1)物語を作ってみる

 ひとつめは、曲に合わせた物語作り。
最初は「子供っぽい」とか「難しい」「恥かしい」と感じるかもしれませんが、この物語は誰かに話すわけではないので、良い・悪い・上手・下手などまったく気にする必要はありません。ラブストーリーでも、アクションものでも、サスペンスでも、その曲から受けた自分の印象を感じるままに物語をつくります。物語が作れない場合は、1シーン(情景)だけでも構いません。

 

これをすることによって以下の3つのメリットがあります。

  1. 自分が持っている漠然とした曲に対するイメージを具体的にまとめる力がつく=説得力のある演奏への第一歩 
  2. 物語(=曲の流れ)に合った音色をイメージしやすくなるので音に対して敏感になる
  3. 音楽に自然とストーリー性がうまれてメリハリのついた演奏になる

 

表現を深める(2)楽譜に、音から受けた印象の色を塗る

 もうひとつは、私自身も学生時代に先生から宿題として出された「楽譜に、音から受けた印象の色を塗る。」ということ。

 

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具体的には、「ここから8小節は明るい雰囲気だからピンク」「この和音は突然暗い雰囲気だから黒」「この1ページは広々した大空のような雰囲気だから水色」……というような具合。

最初は、音から色をイメージするということが出来なかったので、仕方なく勝手に好きな色を選んでカラフルな楽譜を作ってレッスンの時に持って行ったものです。もちろん、その楽譜に正解も不正解もないので、先生は色については何もコメントせず、ただ「塗ってある色のように弾きなさい」と言いました。

ピンクって、どうすればそんなふうに聞こえるかな?黒の和音ってこんな感じか?……など、想像力をフル回転させて試行錯誤。

最初は、わけもわからずいい加減に取り組んでいましたが、その色とりどりの楽譜を眺めながら練習を重ねていくうちに、「あれ?ここは水色よりも、濃い緑っぽく弾きたい」など、漠然と自分なりに音楽と色のイメージがわくようになりました。そうなると、濃い緑はこのぐらいの音量でこんなふうに弾きたい、というように自分の作りたい音の方向性がみえてきたのでした。

 

演奏へのこだわりをもつ

 「音」という目に見えないものを操って音楽を奏でようとする時、一度その「目に見えないもの」を自分なりの方法で「目に見えるもの」にしてみる。そうすることによって、今まで漠然としていた音楽へのイメージが次第にはっきりしてきて、それが自分の演奏へのこだわりになっていきます。

「こう弾きたい!」というこだわりを持つようになれば、練習中にピアノと関係ないことをいろいろ考えたり、ましてや飽きている暇はありません!自分が考えた物語や色にマッチする音作りをしていく。それが表現を深めていくことになるのです。

音からイメージする物語や色の向こうに、きっとあなたの音楽が見えてきます。是非試してみてください。