子供でなくても弾きたい「子供のための」ピアノ曲
先日、ピアノ教室を開いている友人達と会った時に、曲名に「子供のための」という言葉が入っていると生徒さんが弾きたがらないで困る、という話しになりました。
シューマン、チャイコフスキー、カバレフスキー、バルトーク、ギロックなど、初級レベルの人が楽しみながら様々なピアノ技法を習得できる優れた曲集がたくさんあるにもかかわらず、タイトルが『子供のためのアルバム』だと、どうしても「簡単」「単純」「幼稚」というような印象が先に立ってしまい、選曲の際のマイナス要因になってしまうのです。
最近の子供は早熟ですしプライドもあるので、小学校低学年でも「子供のための」という文字に反応してしまい、あまり弾きたがらないのだとか。私の教室は大人の生徒さんばかりなので尚更で、実際、私も勧めづらいところがあります。
もちろん生徒さんには、「子供のためのアルバム」と言っても必ずしも子供っぽい曲想であったり、技術的にも簡単な曲ばかりではなく、表現を含めしっかり完成度を上げて弾きこなすためには、それなりにチャレンジである旨は説明します。それでも、特に発表会で弾く為の選曲の場合は、プログラムに「子供のための」という文字が載ってしまうのはカッコ悪い……と敬遠されることが多いのです。
作曲者が「子供のための」を曲名につける理由
作曲家が「子供のための」というタイトルをつけた背景には、子供の小さな手でも無理なく弾けるように配慮した、最後まで弾き通せるように短くした、子供が イメージしやすく、興味をもちそうな曲想を心がけた、などが挙げられます。また、自分の子供へのプレゼントとして書いた曲だから、最初は違う曲名を考えていたけれど、出版社のアドバイスで「子供のためのアルバム」に変更したなどと解説されているものもあります。
でも実際には作曲家もあまり深く考えずに、ビギナー向けの曲だから「子供のための」と付けたというケースもあるのではないかと思います。ひと昔前までは、大人になってからピアノを習い始める人が今ほどは多くなかったので、大人のビギナー向けの曲の需要があまりなかったのではないでしょうか?
作曲家の思い
作曲家としてみれば、自分の作った曲をひとりでも多くの人に弾いてもらいたいと思うはず。大人になってからピアノを始める人も多い今の時代、「子供のための~」という言葉を曲名につけるのであれば、なぜ「子供のため」なのか、その理由を楽譜の中にしっかり記して欲しいなと思います。
作曲家、野田暉行さんの「子供のためのアルバム」の中にはこのように記されたページがあります。
技術的に子供のためという制約こそあれ、また、音楽も理解しやすい姿こそしておれ、内容は決して気持ちの浅いものではありません。むしろ大人も十分に楽しめるよう、すなわち子供の時に弾いた曲を、ふとまた、大人になってから弾いてみたくなる、というような曲をと思って作りました。
このように作曲家の思いを知ることができれば、「子供のための」というタイトルに対しての抵抗感が和らぎ、もっと幅広い年齢層の人たちによって演奏される機会も増えるのではないでしょうか?
子供でなくても、そしてビギナーでなくても弾きごたえがあり楽しめる素敵な「子供のための」曲は数多くあります。そのほんの一部をご紹介しておきますね。
■シューマン「子供のためのアルバム」より "ミニョン"
youtu.be■シューマン「子供のためのアルバム」より ”冬の時 その1”
youtu.be■チャイコフスキー「子供のためのアルバム」Op.39より ”マズルカ"
youtu.be
■ギロック「子供のためのアルバム」より ”雨の日の噴水"