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Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

ショパンが聴いたショパンの響き

先日、久しぶりにCDを購入しました。日本を代表する人気ピアニストの一人、仲道郁代さんが先月リリースしたショパン「ワルツ集」です。

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 ショパン「ワルツ」のCDは他のピアニストのものを持っていますし、聞き比べだったらYouTubeでも十分。正直なところ、ワルツはショパンの作品中で特に好きかと言えばそういうわけでもなかったのですが、ではなぜショパンのワルツ集なのかというと、実はこのCD、2枚組になっていて特別な趣向が凝らされているのです。

どちらのCDもまったく同じ曲目が収録されているのですが、一枚はショパンが生存していた時代に作られたプレイエルのピアノ(1842年製)で演奏されたもの。そしてもう一枚は、現代のスタインウェイのコンサートグランド(2013年製)で演奏されたもの。 つまり、ショパンが聴いていた響きと、現代私達が聴き慣れている響きの聴き比べができるCDなのです!

当時のピアノと現代のピアノの違いは、本で読んで知ってはいるものの、実際にその当時のピアノで弾かれた演奏を聴く機会はそうそうありません。音色はもちろんですが、強弱の幅やペダルのかかり方、低音部と高音部のバランスなど、現代のピアノとの違いを知ることは、ショパンだけではなく、その時代の作曲家の作品を理解するうえでとても参考になります。

では具体的にプレイエルのピアノは、現代のピアノとどのように違うのか?仲道さんが書かれたライナーノートから引用します。

音を出してみて最初に私が気づいたのは、その楽器のリフトアップ感だった。
フレーズの終わり、音の終わりが現代の楽器のように立派に長くは残らない。いともはかなく繊細に消えゆく音たち。
<中略>
現代の楽器と比べて浅く軽い鍵盤、小さなハンマー、華奢な弦を使うことによる音色の軽さ、明るさ、柔らかさ。これらが独特な表情のしなやかさを生む。決して大仰にならない豊かさ。そこに、ショパンの音楽の流れる品格を見出すことができるのだ。

 仲道さんはまた、時代の異なる二つの楽器を使用して同じ曲を弾いてみて、こうも解釈が違ってくるのかと驚いたと書いています。響きの豊かなスタインウェイを弾く方が、ゆっくり目になるとのこと。テンポの遅い作品では、その演奏時間の差にびっくりしたそうです。

現代のダイナミックなピアノの響きに慣れている私達にとっては、ショパン当時の音色はドライなので、迫力や華やかさに物足りなさを感じる人もいるかもしれません。また、このCDの録音では不等分律で調律されているため、現代の平均律で調律された響きに慣れている耳には、音程が狂っていて「これがショパンの聴いていたショパンなの?」とガッカリしてしまう人もいるかもしれません。

でも立場を逆にして、もしショパンが現代の響きの豊かなピアノで弾かれた自分の曲を聴いたらどう思うでしょう?もしかすると「そんなふうに僕の曲を弾かないで!」と嘆くかも(?)しれませんね。

私は、プレイエルで弾かれたクラッシーな一枚目のショパンの響きがとても気に入ってしまい、ひたすらそちらばかりを聴いています。今まであえて聴く気になれなかったワルツが、このCDのおかげで好きになりました!

Sony Musicのサイトで、全曲さわりだけ試聴することが出来ます。ショパンが聴いたショパンの響き、是非聴いてみて下さい。

www.sonymusicshop.jp