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Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

あなたの一番いい先生は……

学生の頃から、雑誌や新聞の心に残ったコラムを切り取り、ファイルに入れて保存しています。最近、記憶力の衰えもあり、見直すたびに初めて目にした時と同じ感動をおぼえるので、老化も悪いことばかりではありません(笑)。

 先日、久しぶりにファイルを開いてみたら、やはりありました!すっかり忘れていた心に響く記事が。ここで皆さんとシェアさせていただきたいと思います。

夢見る科学~はかない一瞬に注ぐ愛情」佐治晴夫(理学博士)/著 より抜粋
(2002年3月3日 読売新聞掲載)

はかなく消えていく芸術に音楽があります。沈黙から生まれ、再び沈黙の中に沈潜してゆく音はまるで、私たちの生そのもののようです。

今、聞こえている音は、過去に響いていた音の余韻あるいは記憶と重なり、未来の音への予感となって連なっています。となると、音楽のレッスンには絵画や彫刻のように目で見えるお手本がないわけですから、あくまでも自分自身で一瞬一瞬をつくりながら試行錯誤していかなければなりません。過去からの集積に耳を澄ましながら未来を見据えていくことも必要です。

かつて、大戦後の混乱で疲れきった日本国民の心にショパンコンクール入賞ということでひとつの希望の明かりを灯したピアノスト、田中希代子さんは、晩年になってまったく手の動かない難病に冒され本当にご不自由な日々を過ごされていましたが、そんなある日、お弟子さんの一人に「あなたの一番いい先生はあなた自身の耳なのよ」ともらしていたことを、ふと思い出しました。どんな先生についていたとしても、最終的には全身全霊を傾けて自分一人で演奏しなければならないということでしょう。

 

音楽的な耳を育てる


ピアノに限らず、楽器を演奏するうえで技術の上達と同等に大切なのは「良い耳」を持つこと!

たとえば、CDを聞いてある部分のニュアンスを真似してみたいと思ったり、先生に「こんな感じで弾いてみなさい」と言われたとき、その音がどんな感じで弾かれているのか聞き取れなければ真似することは出来ません。

また、楽譜通りの正しい音を弾いていても、その音が美しく響いているのか、バランスはいいのか、リズムはあっているのかなど、自分で聞いて判断できなければ本当の意味で音楽を奏でているとは言えませんし、なかなか上達もしません。

では、「良い耳=音楽的な耳」は、どのようにすればもつことができるのでしょうか?

私の今までのレッスン経験からすると、子どもの時にピアノを習っていたとか、初級上級などレベルに関係なく、聴いてすぐに音のニュアンスを捉えられる人は特別なトレーニングをしていなくても自然に出来てしまいます。それは、もって生まれたセンスなのかもしれませんし、今までの生活のなかで自然に育まれてきたものなのかもしれません。

では、そうでない人は絶望的なのか…というと、そういうことでは決してありません!音楽的な耳は、努力することによっていくつからでも育てることが出来ます。

演奏を聴き比べる

今は、CDを買わなくても、YouTubeなどネット上で手軽に演奏を聴き比べることができます。同じ曲を、何人かの演奏で聴き比べてみましょう。テンポや強弱、メロディーの歌い方など、同じ曲なのに人によって「こんなに違うのか?」というぐらい表現が違います。

最初はどの演奏も同じように聞こえたとしても、何度か聴いているうちに、だんだん自分の好きな演奏というのがわかってきます。好みが出てくるということは、漠然とでも音楽を聞き分ける耳ができてきているということ!

小さな進歩かもしれませんが、それを習慣化することによって徐々に音に敏感な耳が育っていくものです。1ヶ月や2ヶ月、または1年や2年では成果は感じ取れなくても、必ず音の聴き方は変わって来るので是非続けてみてください。

 

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