Viva!ピアノライフ

All About ピアノガイド北條聡子のブログ

世界初!? ピアニスト専用シューズとは?

『ペダル・テクニックが上がる!』という、ピアニストにとってはとても魅力的なキャッチコピーのピアニスト専用シューズがあるのを知っていますか?

快適な履き心地をうたった普通の靴はたくさん販売されていますが、ピアニスト専用の靴は何が違うのかというと、ペダルを踏みやすい角度にヒール底がカットされている、ペダルにフィットしやすくするために爪先を上げたフォルムになっている、音を立てない靴底素材を使っているなど、ペダリングしやすい工夫が凝らされているということ。

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女性の場合、人前で演奏する時に洋服に合わせて靴をコーディネートすると、ヒールが高かったり細すぎたりしてペダルを踏む際に支えが不安定になったり、靴の底が硬かったり滑りやすかったりでペダルがいつもと同じように踏めず、思わぬ失敗のきっかけとなってしまうことがあります。

ですから、教室の生徒さんたちには、コンサートの前には必ず本番で使う靴を履いて練習しておくようにお願いしてあります。ふだん、靴下やスリッパでペダルを踏んで弾いている時とはかなり感覚が違うものなので、これは必須です!

私は以前、ラジオ収録のコンサートの際に、わずかにペダルを踏む音が入ってしまっているということで、何曲か放送をカットされたという苦い経験があります。それからは、靴底の材質には気をつけていますが、その他にはコレと言ってさほどこだわって本番の靴を選んだことはありません。ただし、だからと言って何でもOKというわけではなく、どんなに衣装とマッチしていても、なんとなくペダルの踏み心地が良くないので本番では使わないという靴はあります。

その "なんとなく踏み心地が良くない" を解消した『ピアニスト専用シューズ』というものが、どれほどのものなのか試してみたい気もしますが、わたし的には「今さら」という気もするし、それほど頻繁に使わないのに結構いいお値段!しかも、ゴールドもいいけれどドレスによってはシルバーのほうが……、いやいや、黒のほうが重宝かも?などと迷ってしまうと、実際にはなかなか手が出そうにありません。

それにしても感心するのが、チラシに踊るピアニストへの殺し文句!「ペダルの感覚をつかみ、豊かな音色を奏でる」「オリジナルヒールで、思い通りのペダリングを実現」「最小限のペダル負荷で、集中力が持続」「ステージでの足音を消し、より美しい演出」。だんだん『神頼み』ならぬ『靴頼み』のようにも聞こえてきます。

実際にこの靴を履いたからと言ってペダリングが上達するわけではないでしょうが、緊張する本番に臨むには、少しでも不安になる材料は抱えていたくないもの。ペダルが踏みやすいうえに、「この靴を履いているから大丈夫!」といったお守り的な役割も果たしそうで、ピアニストにとっては有り難いアイテムかもしれませんね。

ピアノ演奏者のための靴 Little Pianist(リトルピアニスト)

実はショパン作曲なのに……

先日生徒さんから、ショパンに挑戦してみたいと相談され「短いけれど、この曲どうでしょう?」と『前奏曲集』(作品28)7曲目のさわりを弾いたら「えっ!これ、太田胃酸のコマーシャル曲じゃないですか!?」とビックリされました。あのよく知られた太田胃酸のCM曲が、実はショパン作曲だと知らない人は意外に多いのです。

24曲から成る前奏曲集の中におさめらた1分足らずの短い曲で、アンコールなどで単独で演奏されることもありますが、太田胃酸のCMに使われなかったらこんなに多くの日本人が耳にすることもなかったことでしょう。そう考えると、ショパンは太田胃酸に感謝すべきなのかもしれませんが、「どうしても太田胃酸のイメージと切り離せない。」ということで、他の曲を選ぶ生徒さんも結構いらっしゃいます。

でも、そこまで商品と音楽が強く結びついて人々の記憶に残っているということは、CM曲としては大成功ですよね。ちなみに、この前奏曲第7番はイ長調。胃腸薬の胃腸イ長をかけてこの曲を選んだという話を聞いたことがありますが、これが本当ならば選曲した人はすごいセンスの持ち主!

もう一曲、CMに使われたわけではありませんが「えっ!これショパンの曲だったんですか!?」とよく驚かれる曲があります。恥ずかしながら、私も音楽高校に入ってから知ったのですが、ピアノソナタ第2番「葬送」の第3楽章です。死ぬ場面を茶化したり、絶体絶命の場面などに使われるメロディーで、私も子供の時に ♪タンタータタン、タータタータタータタ~~ン♪ とふざけて歌ったものです。いったい誰が最初に使い始めたのか?

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こんなふうにショパンは自分が真剣に作った曲が思いもよらなかった場面で使われて、さぞかし不本意だとは思いますが、これをきっかけに興味をもってじっくり原曲を聴いてもらえれば少しは慰めになるかも?

ショパン/24のプレリュード第7番,Op.28/演奏:金田真理子 - YouTube

ショパン/ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調「葬送」 第3楽章,Op.35,CT202 - YouTube

 

音楽は言語みたいなもの

先日、マエストロ・プロフォンドの『すてきにピアノ』(全5巻)の第3巻「完璧な練習法」をご紹介しましたが、このようなノウハウ本はレッスンの参考になるので、私も日頃からできるだけ目を通すようにしています。特に良いと思った本は、こちらや教室のブログでもご紹介していますが、先日紹介した「完璧な練習法」を早速購入して読まれた生徒さんがいて、明らかに前回より上手になっていて感激しました。なんでも「読んだら胸に刺さる言葉がたくさんあった。これはいけない!と思って今までの練習の方法を改めた。」とのことでした。

実際にこの本の効果を確認できたこともあり、第1巻「ペダリング」と第2巻「豊かなタッチ」も読んでみることにしました。

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マンガだと子供向けという印象が強いですが、イラストのおかげで言葉だけでは理解しづらい内容もわかりやすく、大人が読んでも役に立つ知識が盛り込まれています。

たとえばペダルについて、初級レベルでは「踏む」「上げる」の単純な動作をマスターすればOKだとしても、曲の難易度が上がりそれに見合った表現が求められるようになると、踏む深さやタイミングにも違いをつけることが必要になってきます。これは、文章だけではなかなかイメージしづらいのでイラストは大きな助けになります。

また第2巻「豊かなタッチ」では、音に対してのイメージの作り方や、音色(ニュアンス)の違いとその打鍵の仕方などが説明されています。楽譜に書かれている音を正しく弾くことはもちろん大切ですが、音に表情をつけなければ本当の意味での「音楽」にはなりません。

レッスン中に「もっとメロディーを歌って!」と言うことがよくあるのですが、「歌っているつもりだけれど……」または「どうすればいいのかわからない。」と言われることが結構あります。そのような時、私はよく朗読やお芝居のセリフを例に挙げて説明しますが、同じような内容を噛み砕いてとてもわかりやすく説明してある箇所があったのでご紹介しておきましょう。

言葉を表すときの声の使い方やジェスチャーは、音楽を表すときの扱い方や組み立て方に似ています。
声の高さ、音量を上げたり下げたり……
言葉を切ったりくっつけたり……
呼吸を早くとったり深くゆっくりとったり……

ある意味や音節を強調したり……

こうやって自分の意志を表現することができますね。

音楽も言語と同様に、どのように歌うかで意味が違ってきます。
たとえば「ぼくはあなたを愛してる」という文章。

「ぼくは あなたを 愛してる
ぼくは あなたを愛してる」
「ぼくは あなたを愛してる」
ぼくは あなたを愛してる?」
「ぼくは あなたを愛してる???
「ぼくは あなたを愛してる???」
ぼくは あなたを愛してる
「ぼくはぁー あなたをぉー 愛してるぅー」
ぼくはー あなたをー 愛してる!!!

 このように文字で書かれたものを見ると、強調する箇所が変わると文章のニュアンスが微妙に変化するのが一目瞭然!メロディーも、どの部分を強調して聞かせたいのか、音量だけでなく抑揚や音色、イントネーションの組み合わせ次第で印象が変わります。

自分ではやっているつもりでも、案外「ぼくはあなたをあいしてる」と一本調子に聞こえているもの。ちょっと大袈裟すぎるかな?と思うぐらいで、ようやく他人に伝わると思って間違いありません。

そもそも「どこを強調すればいいのかわからない。」という場合は、鼻歌でもいいのでメロディーを歌ってみてください。自然に盛り上げたくなる箇所がわかりますよ。

梅雨時のピアノメンテナンス

今日は梅雨らしく、朝からシトシトよく降った一日でした。これから梅雨明けまでの約一ヶ月はピアノにとっても憂鬱な季節です。

電子ピアノの場合は心配ありませんが、パーツの大部分が木で作られているアコースティックピアノにとって湿気は大敵!私も過去に何回か、梅雨時に鍵盤が下がったまま戻らなくなったり、おかしな響きになり調律師さんに助けを求めた経験があります。

ピアノにとって最適な湿度は55%!梅雨時の湿気によるトラブルを防ぐには、ピアノのそばに湿度計を置き、小まめにチェックしてなるべく55%に近い状態を維持するように心がけることが大切です。

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台所や風呂場がピアノの置いてある場所に近いなど、住環境によって湿度のコントロールが難しい場合もあると思いますが、外出から戻って濡れた洋服で部屋に入らないというような小さな心遣いひとつでも違いは出るのだとか。

ふだん何気なくやっている行動が、実は部屋の湿度をアップさせていたというようなことがあるかもしれません。この時期、ピアノを取り巻く環境について改めて見直してみるのもいいかもしれませんね。

梅雨時のピアノメンテナンスについて、All Aboutに記事をアップしてありますので参考にしてみてください。

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試してみる?「完璧な練習法」

一生懸命練習してレッスンに行ったのに、先生の前で弾くと思ったように弾けず「家ではもう少し上手に弾けたのですが……」と言った経験のある人はたくさんいるはず。私もその一人です!

先日、ピアノ教室を開いている友人が、「家では上手に弾けていたのに」と言うのが口癖だった生徒さんが、教室に置いてあった”ある本”を読んでから一切それを言わなくなった。それだけでなく、以前より間違えずに上手に弾けるようになった、と話してくれました。

そんなスゴイ本って何?訊かないわけにはいきません!

意外なことに、それは難しい専門書などではなくマンガでした。マエストロ・プロフォンドの『すてきにピアノ』(全5巻)の第3巻「完璧な練習法」です。

早速ネットで検索、注文しようと試みましたがどこのサイトも「在庫切れ」で手に入らず。仕方なくAmazonにリクエストを出しておいたところ、先日再版されてようやく送られてきました。

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たった45ページしかない薄いマンガ本ですが、中身は濃くずっしりと心に響く言葉が満載です。

脳研究者曰く、「意識してあることを最低7回繰り返すと記憶として脳に刻まれる」。このことから、新しい曲に取り組み始めた最初の段階から、極力間違わないで弾くことを心がけた練習をしなくてはいけないという考えをベースに、そのノウハウが詳しく紹介されています。

以下の部分を読むと、誰でもギクッとするのではないでしょうか?

多くの人が、練習するということは、次から次へと出てくる間違いを、出てくるたびに直しながら何回も弾くことだと思っているようだけれど、はじめの日は100コしか間違えなかった。次の日は99コ。その次の日は98コになった……など 間違えを減らそうとしながら本当によく学んでいます。が、その間違いも含めて学んでいませんか?

練習している時に間違えて弾いた音は、修正したつもり、忘れたつもりでも記憶のどこかに残っていて、レッスンや発表会で緊張した時に突如現れるというのです。だから、譜読みの段階から間違わないで弾くようにすることが大切ということ。

でも、最初から間違わないで弾くなんてことは本当に可能なのでしょうか?

正直なところ、「どんな曲でも」というとそれは無理だと思います。でも例えば、実際にピアノに向かう前に楽譜だけをじっくり見て、すぐに判読できない音は名前を書いておくとかリズムを確認しておく。また、最初から1ページ弾いてみようとせずに数小節だけの小さなセクションに分けて、片手ずつゆっくり弾いてみるなどすることで、間違えて弾く音の数は激減するはずです。

「譜読みの段階では間違って当たり前!」という考えを改め練習方法を見直すことで、将来ミスを犯す確率が少しでも減るのであれば、マエストロ・プロフォンドの練習法を試してみる価値があるのではないでしょうか?

すてきにピアノ 第3巻

すてきにピアノ 第3巻

 

 

その差って何?100万と1000万円のピアノ

All Aboutに新しい記事をアップしました。一番安いベーシックなグランドピアノと、1000万円を超える上級モデルのグランドピアノの違いはどこにあるのか?ヤマハ銀座店での取材に基づいて書いた記事です。

実際にその2台のピアノを弾き比べた動画も入っていますので、違いがわかるか?わからないか?……是非聴き比べてみてください。

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